目が覚めるような美しさのアドリア海に浮かぶフヴァル島は、2500 年もの間ワイン作りが続く古いワインリージョンです。
この記事では、土着種も多く、飲み比べも楽しいワインリージョンとしてのフヴァル島の姿をまとめます!
- 1 フヴァル島とは?
- 2 ワインリージョンとしてのフヴァル島
- 2.1 フヴァル島内のマイクロワインリージョン:気候による区分
- 2.1.1 フヴァルスケ・プラジェ(Hvarske plaže、『フヴァルのビーチ』)
- 2.1.2 テラサスティ・ヴィノグラディ(Terasasti vinogradi、『テラス状のヴィンヤード』)
- 2.1.3 ポリャ(Polja、『平原』)
- 2.1.4 ミルナ(Milna、※『ミルナ』= この地区の村の名前)
- 2.1.5 ヴルフ・オトカ – ヴォルフ・イ・クルシュカ・ポリャ・ナ・イストック・オトカ (Vrh otoka – Vorh i krška polja na istoku otoka、『島の頂上 – 盆地と島東端のカルスト』)
- 2.1.6 ヴァレ(ウヴァレ)(Vale (uvale)、『谷間(入江)』)
- 2.1 フヴァル島内のマイクロワインリージョン:気候による区分
- 3 フヴァルのワイン作りの特徴
- 4 フヴァルのワインメーカー
フヴァル島とは?
フヴァル島は、クロアチアのダルマチア地方にある、美しいアドリア海に浮かぶ細長い島。
この細長さながら標高の最高点は 630m ほどあり、かなり急な斜面が続く地形になっています。
土壌は周辺の他の島々とよく似た主に石灰岩とドロマイト。
十分な降水量はあるものの、すぐ染み込んで消えてしまい、地表には大きな池や湖などの水源はありません。
ただ、一箇所、他の島々と大きく異る土壌がフヴァルにはあります。
それが『スタリ・グラド平原』。
スタリ・グラド平原には、氷河期の黄土に由来するシルトを多く含む、(※フヴァル、およびダルマチアの他の土壌と比較して)保水力も高く、肥沃な赤土が広がっています。
農業に適した土壌のある開けた場所が少ないこの地方では、これは非常にありがたい平原。
そのため、紀元前 4 世紀頃に古代ギリシャ人が移住してきてから、このスタリ・グラド平原では現在に至るまで途切れることなく農耕が続けられてきています。
また、農地の区切りや灌漑のシステムなども、その当時の伝統をそのまま引き継いで活用されている部分が多く、このユニークさによって、こちらはユネスコの世界遺産にも登録されています。
参照:
- UNESCO World Heritage Convention『Stari Grad Plain』
- Republic of Croatia Ministry of Culture Administration for the Protection of the Cultural Heritage Conservation Department, Split『The Nomination of the Stari Grad Plain for Inscription on the World Heritage List』
ワインリージョンとしてのフヴァル島
フヴァル島は 2500 年という長い歴史を持つワインリージョン。
ヨーロッパの他の歴史の長いワインリージョンと同様、クロアチアも土着品種で、特に島、または崖や山などで他の土地と切り離された地域にはその場所独自のブドウがたくさん存在します。
フヴァルもこの例にもれず、フヴァルおよびその周辺の小さな島にしか存在しない土着品種が多く、新しい出会いに事欠かない楽しいリージョン!
単一品種で作ったワインに面白さがあるのはもちろん、ブレンドについても、「突き抜けた長所や特徴があるけれど完璧ではない土着のブドウを、いかに他の品種とブレンドし、新たな境地に到達させるか」という、ワインメーカーの腕やチャレンジ精神の産物を楽しめるのも大きな魅力です。
しかも、フヴァル島には意図的に土着品種を守り、育てようという意識の強いワインメーカーが多く、伝統的なワインも、新しく生み出されるワインも味わうことができます。
農家としても、それを選んで栽培していくには勇気が必要なので、自分達が選んでそういうものを飲むことでその勇気を少しでも後押しできるのは嬉しいですよね!
こちらが「珍しい!面白い!美味しい!」ってキャッキャしているのが農家のサポートになるなんて、これぞ理想的な Win-win!
フヴァル島のワイナリーは、ほとんどが島の西側、スタリグラド平原のある方に集中しています。
それに、スタリ・グラド平原と海の間にある山が、まるで狙ったように、南向きの、日当たり最高な急斜面を海側に作っていて、これがまた、島外にまでその名が知られる特級クラスの畑になっているんです!
フヴァル島内のマイクロワインリージョン:気候による区分
フヴァル島内のワイン生産地は、気候の特徴によって次のようなマイクロリージョンに分けることができます。
フヴァルスケ・プラジェ(Hvarske plaže、『フヴァルのビーチ』)
- 島の南側にある、山地から海辺のビーチに向かって続く急斜面
- 石灰岩質で石混じりの乾燥した土壌
- 島内だけでなくクロアチア全体でトップクラスの日当たりのよさ
- プラヴァッツ・マリに最適の土壌で、栽培品種は大部分がプラヴァッツ・マリ
テラサスティ・ヴィノグラディ(Terasasti vinogradi、『テラス状のヴィンヤード』)
- 上述の山地の北側にある、なだらかに平野部へつながる部分
- オリーブ畑、ブドウ畑と畑以外の自然な部分がそれぞれ石垣で細かく区分され、パッチワーク状になっている
- 畑ごとの土壌の差が大きい(砂混じり、砂混じりのローム、石灰岩やドロマイトの上に堆積した石混じりの土など)
- 水はけがよく乾燥しているが、季節(冬、春)的に降雨により小川が発生
- プラヴァッツ・マリが最も多いが、ボグダヌシャやダルネクシャも一定量栽培されている
ポリャ(Polja、『平原』)
- スタリ・グラド(Stari Grad、『古い街』)
- 紀元前 4 世紀に古代ギリシャ人によって築かれた区分が現存
- シルトと赤土の土壌。島の他の部分に比べて保水力が高く肥沃
- イェルシャンスコ・ポリェ(Jelšansko polje、イェルサ平原)
- 畑ごとの土壌の差が大きい(岩石層に近く深度が浅い土、粘土の多いローム、砂混じり、赤土など)
- 季節(冬、春)的に降雨により水たまりになる
- 多様な栽培品種:プラヴァッツ・マリ、ボグダヌシャ、プルチ、クチ、マラシュティナ、トレッビアーノ、マスカット、カベルネ・ソーヴィニョン、シラー、メルロ 他
ミルナ(Milna、※『ミルナ』= この地区の村の名前)
- フヴァルの南西、上述の山地の端から島の端の間に広がる比較的平坦な場所
- オリーブ畑とヴィンヤードが混在
- マール(泥灰土)の土台に石灰質の表土
- 水はけも風通しもよい
- 栽培品種はプラヴァッツ・マリ、ポシップ、ボグダヌシャなど
ヴルフ・オトカ – ヴォルフ・イ・クルシュカ・ポリャ・ナ・イストック・オトカ (Vrh otoka – Vorh i krška polja na istoku otoka、『島の頂上 – 盆地と島東端のカルスト』)
- 上述の山地の東側にある、海抜 400 mからそれ以上の高台から島の東端にかけての地域
- 岩、石の多い土壌で、主要な栽培作物はブドウとラベンダー
- ブドウ品種はダルネクシャ、クチ、プルチ、プラヴァッツ・マリなど
ヴァレ(ウヴァレ)(Vale (uvale)、『谷間(入江)』)
- 主に島の北側に多いリアス式海岸の入り江や谷間の部分
- 砂混じり、または砂混じりのロームに石が多く混ざる土壌
- 周辺を森に囲まれた小規模な畑が多く、栽培品種は様々
フヴァルのワイン作りの特徴
フヴァルにあるブドウ畑は、スタリ・グラドなど一部を除き、険しい斜面や山の中にあることが多いです。
そのため、機械化、自動化は極めて困難(またはコストに見合わない)。
結果として、その工程の大部分が人の手を使った地道な作業頼みになります。
これは大変な反面、その分、繊細な注意を払い、丁寧にワイン作りをするワインメーカーにとっては大きな強みにもなります。
また、フヴァルの畑は風通し、日当たりがよいところが多く、病虫害やカビの被害が発生しにくいこともあって、伝統的で自然なワイン作りが行われているのも特徴です。
フヴァルのワインメーカー
フヴァルのワインメーカーは、島の西側に集中しています。
※参照:Udruga Hvarski Vinari(※フヴァル・ワインメーカー協会)『Hvar Otok Vina』
フヴァル島ワインメーカーのリスト
- Vina Ahearne(ヴィナ・アハーン)※一時的に閉鎖されている模様
- 日本で購入可能 → Vins d’Olive が輸入販売しています
- Vina Carić(ヴィナ・ツァリッチ)
- 2022 年、数量限定で日本初輸入予定!
- Vina Duboković(ヴィナ・ドゥボコヴィッチ)
- Vina Huljić(ヴィナ・フリィッチ)
- Vina Pinjata(ヴィナ・ピニャタ)
- Vina Tomić(ヴィナ・トミッチ)
- Plančić(プランチッチ)
- PZ Svirče(PZ スヴィルチェ)※PZ = 日本で言う農協的なもの
- 日本で購入可能 → 日本唯一のクロアチア料理専門店『ドブロ』のオンラインショップで、上述フヴァルスケ・プラジェにある『Ivan Dolac』村の畑のプラヴァッツ・マリを取り扱っています
- Podrum Vujnović(ポドゥルム・ヴイノヴィッチ)
- Zlatan Otok(ズラタン・オトック)
- 以前日本輸入実績あり(今後に期待)
- Tonči Marijan(トンチ・マリヤン)
- 2019 年に史上初、プラヴァッツ・マリでデキャンタ金賞受賞
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