アドリア海沿岸の島々から始まったクロアチアのワイン作りは、その後ローマ帝国の拡大に伴って現在の国土全域に拡大していきました。
クロアチアのワインリージョンは、気候や環境だけでなく、歴史とも密接に結びついていて、知れば知るほど奥が深く面白いのです。
クロアチアの 4 大ワインリージョン
クロアチアには、細かく見ると 300 ほどのマイクロリージョンがあり、より大きな区分としては次の 4 つの主要リージョンに分けることができます。
- クロアチア・アップランド
- スラヴォニア & ドナウ
- イストラ & クヴァルネル
- ダルマチア
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クロアチア・アップランド
クロアチア・アップランドは緑の丘が続く美しい丘陵地帯。
ディナル・アルプス山脈のフチにあり、夏はほどよく暑いけれど過ごしやすく、冬の寒さはかなり厳しい地域です。
この辺りはスロヴェニア、ハンガリー、オーストリア、クロアチアの国境が(ほぼ)お互いに交差する場所にある(クロアチアとオーストリアは、間にちょっとスロヴェニアとハンガリーが挟まるため国境は接していない)ため、栽培されているブドウやスタイルもよく似ています。
ドライで、爽やかな酸味のあるキレの良い白ワインが好きな方は、この地域の白ワインとは、いい出会いが期待できるかもしれません。
赤:
・ポルトゥギーザッツ Portugizac(ブラウアー・ポルトギーザー)
・フランコヴカ Frankovka(ブラウフレンキッシュ)
・ ピノ・ノワール Pinot Noir
白:
・ シポン Šipon またはプシペル Pušipel(フルミント)
・ スィルヴァナッツ・ゼレニ Silvanac Zeleni(シルヴァーナー)
・ ピノ・ビイェリ Pinot Bijeli(ピノ・ブラン)
・ ピノ・スィヴィ Pinot Sivi(ピノ・グリ)
・ クラリェヴィナ Kraljevina(※クロアチア土着種)
・ シュクルレット Škrlet(※クロアチア土着種)
…などです!
10 月末 〜 11 月頭は、ポルトゥギーザッツの新酒が出てきて、飲み比べがはかどって仕方ない
スラヴォニア & ドナウ
スラヴォニア&ドナウは、ドナウ川、ドラヴァ川、サヴァ川の 3 つの大河に囲まれ、肥沃な土壌に恵まれた、のどかで牧歌的な平原地帯。
この地域は『パンノニア平原』と呼ばれる、カルパチア山脈・アルプス山脈・ディナル・アルプス山脈の尾根に囲まれた盆地にあたり、気候は、暑い夏と厳しい冬が特徴の大陸性気候です。
ブドウ畑はなだらかな丘の斜面に作られている事が多く、ゴツゴツした山が多いクロアチアの他の地域と違って広い面積を確保できる上に機械化も進めやすいため、かなり規模の大きいワイナリーが多く存在しています。
その分、値段重視のイージーなワインが多いのも事実…ですが、その中でも品質にこだわるワイナリーや、たまたま地形的に夏暑くなりすぎず十分な酸味が確保できる場所にあるワイナリーなどでは、「スラヴォニア = 安ワイン」的イメージをひっくり返す素晴らしいワインも!
赤:
・ フランコヴカ Frankovka(ブラウフレンキッシュ)
・ カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)
・ メルロ(Merlot)
・ ツヴァイゲルト Zweigelt(ドイツの大学で開発された品種。オーストリアで人気)
・ カベルネ・フラン(Cabernet Franc)
白:
・ グラシェヴィナ Grašvina(ウェルシュ・リースリング)
・ トラミナッツ Traminac(ゲヴェルツトラミネール)
・ シャルドネ(Chardonnay)
・ ラインスキ・リズリング Rajnski Rizling(リースリング)
…などです!
どこに行ってもある、テーブルワイン(白)の代表格です。
小難しくなくさっぱりスッキリ、ドライで飲みやすい、万人受けするワインなので、これはレモン系サワーが人気の日本でも、もっと流行っていいんじゃないかと思う…。
お手頃価格のものが多いですし。
…しかも最近、これでものすごく良くできたスパークリングを作るワインメーカーがちょこちょこ出てきて、「グラシェヴィナ、侮れん…!」ってなりました。
イギリスのエリザベス女王の戴冠式でも提供されて、その後も王室から何度もオーダーが来ていることで知られています!
イストラ&クヴァルネル
アドリア海からの暖かい空気と、ディナル・アルプス山脈からの冷たい空気がぶつかり合い、クロアチアの中でも独特の気候を生み出しているのがイストラ&クヴァルネル。
イストラ半島は肥沃な赤土が多く、地形も気候も比較的穏やかで、ワイン生産地としても、オリーブオイル生産地としても、国際的に非常に高く評価されています。
また、1990 年代にクロアチアが独立した後、個人経営のこだわりワインメーカーが多数できたことで健全な競争が生まれ、これもワインの品質の向上に大きく寄与。
今では世界各地のワインコンテストで何年も連続してトップクラスの評価を受けるようなワインメーカーを排出する地域となりました。
赤:
・ テラン Teran(※クロアチア土着種)
・ メルロ Merlot
・ カベルネ・ソーヴィニヨン Cabernet Sauvignon
・ ボルゴニャ Borgonja(ブラウフレンキッシュ)
・ フルヴァティツァ Hrvatica(※クロアチア土着種)
・ バルベーラ Barbera
白:
・ マルヴァジヤ・イスタルスカ(※クロアチア土着種)
・ ムシュカット・ジュティ Muškat Žuti(モスカート・ジャッロ)
・ ムシュカット・ビイェリ Muškat Bijeli(ミュスカ・ア・プティ・グラン・ブラン)
・ ジュラフティナ Žlahtina(※クロアチア土着種)
・ シャルドネ Chardonnay
・ ピノ・ビイェリ Pinot Bijeli(ピノ・ブラン)
…などです!
そして赤の圧倒的王者はテラン!
この 2 種はいずれも、若い時はフレッシュで爽やかに、エイジングをかければ厚みと深みのあるエレガントに、様々なスタイルで楽しむことができるのも魅力です。
テランで作ったロゼも、よくできたものが結構ありますよ。
ダルマチア
ダルマチアは、そのほぼ全域が、険しい山地が海に突入している場所にあたります。
そのため、斜面なのか盆地なのか、斜面ならばその角度や標高、面している方角はどちらか、島なのかそれとも本土なのか…など、ブドウが育てられる土地の条件が千差万別なのが最大の特徴。
ここでは、小規模な上に機械の導入が不可能に近い(または経済的にコストに見合わない)険しい畑が多く、農作業がほぼ手作業になりがち。
しかしそれを逆にメリットとして、個性と丁寧なワイン造りを追求する家族経営の個性派ワインメーカーが多いのもおもしろいところです。
また、山地や海、谷などによって他の畑と切り離されていたり、土壌が砂混じりだったりといった様々な要因により、ヨーロッパのブドウを壊滅一歩手前まで追い込んだ寄生虫による大災害、フィロキセラ禍を生き延びた土着品種が相当数あることも特徴の一つ。
テロワールの個性+品種の個性が入り交じる、奥の深いリージョンなのです。
赤:
・ プラヴァッツ・マリ Plavac Mali
・ プラヴィナ Plavina
・ バビッチ Babić
・ ツルリェナク・カシュテランスキ Crljenak Kaštelanski
・ ダルネクシャ Drnekuša
・ ドブリチッチ Dobričić
白:
・ ポシップ Pošip
・ マラシュティナ Maraština
・ ヴガヴァ Vugava
・ ボグダヌシャ Bogdanuša
・ グルク Grk
・ クユンジュシャ Kujundžuša
・ マルヴァシヤ・ドゥブロヴァチュカ Malvasija Dubrovačka
…などです!
ただとりあえず、プラヴァッツ・マリ(赤)とポシップ(白)がダルマチアワイン界の王者であることには異論なし。
プラヴァッツ・マリは作る場所、作り手によって仕上がりの幅が極端に広いので、飲み比べが非常に楽しいワインです。
関連動画
東京クロアチア倶楽部の YouTube チャンネル、「とーくろちゃんねる」で上記を動画にまとめています。
動画の方がわかりやすいなー、という方はそちらもチェックしてみてくださいね!